重み付け適合とスルーブランク

重み付け適合とスルーブランクのオプションは、メソッド作成時に[標準液]ページの[検量線タイプ]表から選択できます。

以下の詳細について説明します。

重み付け適合:仕組み

較正ポイントをプロットするとき、必ず、ポイントに関連するいくらかの誤差が生じます。そのような誤差には以下のものが含まれることが知られています。

  • 読み出しノイズ。ノイズは一定です。
  • フォトンショットノイズ。シグナルの平方根に比例します。
  • フリッカノイズ。シグナルに比例します。

通常、曲線が大きくなるほどノイズが増えます。曲線上の後続のポイントごとに、関連する誤差がより大きくなります。重み付け適合を適用すると、検量線の線は、誤差のより小さいところで密接に適合されます。そのため、標準偏差が増えると、ポイントの重み付けは小さくなります。

図示すると、重み付けにより下図の内容を実現しようとします。

青色の丸は、検量線上のポイントを表します。赤い線は誤差範囲を示します。後続の較正ポイントごとに誤差範囲が増えていることに注目してください。

上図の例では、相対的な重み付けがより大きいため、最初のポイントが検量線に密接に適合されています。各ポイントに関連する誤差の増加によって重み付けが減少するにつれ、検量線はポイントに密接に適合されなくなります。ただし、重み付け適合では、各ポイントに関連する誤差範囲内に検量線が確実に収まるよう試みます。

スルーブランク

[スルーブランク]が選択されていないとき:

  • 検量線にブランクがないときや、ブランクが削除されたとき、検量線では原点をがランクとして使用されます。
  • [標準液]ページの[マルチ較正]パラメータで定義された最小濃度が 0 を超えるときは、原点は無視され検量線で使用されません。

[スルーブランク]が選択されているとき:

  • 較正にブランクがないときや、ブランクが削除されたときは、検量線は原点を通るように強制されます。
  • [標準液]ページの[マルチ較正]パラメータで定義された最小濃度が 0 を超えるときは、検量線が原点まで達しないときでも、検量線の生成に際し、原点はポイントとして使用されます。したがって、[マルチ較正]を使用しており、ゼロ以外の標準液によって検量線の最小濃度を定義している場合、[標準液]ページの[マルチ較正]パラメータで[スルーブランク]を選択しないようにします。

重み付け適合またはスルーブランクの選択

1 つのブランクと 1 つの標準液のみを分析しているのでない限り、[重み付け適合]を使用して、より高い真度を得ることを推奨します。重み付け適合は、より低濃度での真度を向上させるのに役立ちます。[スルーブランク]オプションも、結果が[重み付け適合]の結果と類似しているため使用できますが、[スルーブランク]の場合は、誤差がブランクでゼロと見なされるため、重み付けプロセスのより極端なバージョンとなります。原則として、[重み付け適合]を使用すると最良の結果が得られます。重み付け適合ではブランクでの誤差をゼロと見なさないため、[スルーブランク]よりも現実的な検量線が提供されます。ただし、どちらのオプションも使用できます。必要に応じて組み合わせて使用することもできます。

重み付け適合とスルーブランクの式

検量線を計算する式は、[標準液]ページで以下のどのオプションを選択したかにより異なります。

[重み付け適合]なし、[スルーブランク]の強制なし

[標準液]ページで[重み付け適合]または[スルーブランク]のいずれかを選択していないときは、以下の式を使用して検量線が計算されます。

以下の式は、使用される二次曲線を示します。線形適合を実行しているときは、「二乗」関数が式から除去されます。

Ii = a0 + a1ci+ a2ci 2 + ei

a0、a1、a2 を解き、S(ei 2) を最小化するために最小二乗法を使用

変数の意味は次のとおりです。

I = 強度
c = 濃度
e = 誤差
i = ブランク、標準液 1、標準液 2 など

強度を濃度に変換するには、以下の式を使用します。

I未知 = a0 + a1c未知 + a2c未知2

[重み付け適合]なし、[スルーブランク]の強制あり

[標準液]ページで[スルーブランク]を選択しているが、[重み付け適合]を選択していないときは、以下の式を使用して検量線が計算されます。

以下の式は、使用される二次曲線を示します。線形適合を実行しているときは、「二乗」関数は式から除去されます。

Ii - Iブランク = a1ci + a2ci 2 + ei

a1、a2 を解き、S(ei 2) を最小化するために最小二乗法を使用

変数の意味は次のとおりです。

I = 強度
c = 濃度
e = 誤差
i = 標準液 1、標準液 2 など

強度を濃度に変換するには、以下の式を使用します。

I未知 = Iブランク + a1c未知 + a2c未知2

[重み付け適合]あり、[スルーブランク]の強制なし

[標準液]ページで[重み付け適合]を選択しているが[スルーブランク]を選択していないときは、以下の式を使用して検量線が計算されます。

以下の式は、使用される二次曲線を示します。線形適合を実行しているときは、「二乗」関数は式から除去されます。

wiIi = wia0 + wia1ci + wia2ci2 + wiei

a0、a1、a2 を解き、S((wiei)2) を最小化するために最小二乗法を使用

変数の意味は次のとおりです。

wi = 1/(StdDev(Ii))
I = 強度
c = 濃度
e = 誤差
i = ブランク、標準液 1、標準液 2 など

強度を濃度に変換するには、以下の式を使用します。

I未知 = a0 + a1c未知 + a2c未知2

[重み付け適合]あり、[スルーブランク]の強制あり

[標準液]ページで[重み付け適合]と[スルーブランク]を選択しているときは、以下の式を使用して検量線が計算されます。

以下の式は、使用される二次曲線を示します。線形適合を実行しているときは、「二乗」関数は式から除去されます。

wi(Ii - Iブランク ) = wia1ci + wia2ci2 + wiei

a1、a2 を解き、S((wiei)2) を最小化するために最小二乗法を使用

変数の意味は次のとおりです。

wi =  1/(StdDev(Ii))
I = 強度
c = 濃度
e = 誤差
i = 標準液 1、標準液 2 など

強度を濃度に変換するには、以下の式を使用します。

I未知 = Iブランク + a1c未知 + a2c未知2

関連項目: