FACT バックグラウンド補正を組み込んだメソッドの設定と実行

干渉補正の FACT モデル

ワークシートの高速自動カーブフィッティング テクニック(FACT:Fast Automated Curve-Fitting Technique)ページは、FACT 干渉補正を設定する場所です。[条件]タブの[元素ごとの設定]テーブルで[バックグラウンド補正]タイプとして[FACT]を選択している場合に利用できます。

他の元素からのオーバーラップするエミッションによって検体のピーク付近のスペクトルが歪んでいるときは、報告される濃度結果に歪みが生じます。以降、検体の元素のスペクトルに影響を与える他の元素と呼びます。FACT では、干渉のスペクトル形状を記憶して自動的にこれらの形状をサンプルのスペクトルから減算することにより、歪みを除去します。FACT では、どの程度のサンプルのスペクトルが検体によるものであるかを判断できるように、ブランクや検体用標準液のスペクトル形状を記憶する必要があります。

可能な場合は、サンプル中の干渉元素の予想される濃度と一致するように干渉溶液の濃度を選択します。たとえば、高濃度のニッケルを含む可能性のあるサンプルを測定している場合は、ニッケルの干渉溶液を高濃度付近の濃度で調製します。

検体(メソッドでの較正、測定、報告対象)と、異なる検体元素の干渉の両方である元素が存在する場合があります。このような元素の混合を含む複数元素の標準液を使用することは避けてください。

元素ごとに最大 10 個の FACT モデルを作成することが可能で、ブランク、検体、マトリックスモデル、最大 7 種類の干渉モデルのオプションから構成できます。マトリックスモデルとブランクモデルはすべての検体で使用できます。

テンプレートは FACT モデルを保存できます。テンプレートから新規ワークシートを作成すると、新規ワークシートで FACT モデルが使用可能になります。

FACT のプロセスは次のとおりです。

  • ブランクモデルを作成する(すべての FACT 分析用にブランクを使用するために選択します)
  • マトリックスモデルを作成する(オプション)(すべての FACT 分析用にマトリックスサンプルを使用するために選択します)
  • 検体モデルを作成する
  • 干渉モデルを作成する
  • モデルを選択する
  • FACT をテストする

これ以降の分析中、測定される各スペクトルはモデルを使用してフィッティングされます。検体のピークモデルによる成分を使用して検体の強度を算出します。

マトリックスモデルは、FACT を使用したすべてのラインについてオプションで同時に測定できます。

ブランクモデルは、FACT を使用したすべてのラインについてオプションで同時に測定できます。

実行される計算では、これらのサンプルが純粋であると想定されるため、FACT を使用するときは、干渉の純粋なサンプルと検体の純粋なサンプルを使用する必要があります。 

FACT をテストし適用するには、FACT に使用するモデルに、ブランクモデルと検体モデルを含める必要があります。

[干渉の数]

干渉の数を設定します。数値を入力するか、上下矢印を使用します。複数の異なる干渉があり、ただしそれぞれが検体の 1 つのみに影響を与える場合は、干渉の数を増やす必要はありません。1 行の干渉列のみを使用し、各測定に 1 つの別の干渉溶液を[干渉 1]列に提示できます。選択した干渉の数は、最も大きな干渉の数を持つ検体に足りているだけで十分です。ただし、同じ検体の結果に影響する 2 つの干渉元素がある場合は、干渉の数を 2 に増やし、各干渉を個別の単一の元素溶液で測定します。

[ラベル名の編集]

手動で FACT モデルを決定するときは、FACT モデルの名前を選択して編集します。

分析中に作成された FACT モデルは、選択したサンプル名([シーケンス]ページで入力された名前)を使用します。元素ごとに最大 10 個の FACT モデルを持つことができます。

[ライブラリ表示]

[FACT ライブラリ]を選択して表示します。

[ワークシートモデル]

ワークシート FACT モデルはワークシート内に保存され、後で参照できます。また、すべてのワークシートからアクセスできる FACT ライブラリにも保存できます。

FACT モデルを手動で作成するか、ワークシートのプルダウンメニューから溶液を選択することで、ICP Expert で測定した溶液に含まれるスペクトル情報を使用することができます。

[ラベル]

各ラインのラベルと波長を[元素]画面で指定したとおり表示します。元素を波長の降順/昇順で一覧表示するには、[ラベル]列の見出しをクリックします。

[ブランク]

FACT モデルを手動で収集する場合、このセルを選択し、ブランク溶液を提示してから、[リード]をクリックしてブランクのスペクトルを収集します。スペクトルが収集されると、[シグナルグラフ]に表示されます。

[マトリックス](オプション)

FACT モデルを手動で収集する場合、このセルを選択し、マトリックス溶液を提示してから、[リード]をクリックしてマトリックスのスペクトルを収集します。このモデルを収集しない場合は[--]を選択します。スペクトルが収集されると、[シグナルグラフ]に表示されます。

[検体]

このセルを選択し、検体溶液を提示してから、[リード]をクリックして検体(純粋な濃縮標準液を使用)のスペクトルを収集します。スペクトルが収集されると、[シグナルグラフ]に表示されます。

[干渉 1]

このセルを選択し、干渉溶液を提示してから、[リード]をクリックして干渉(目的の元素に干渉する元素の純粋な濃縮溶液)のスペクトルを収集します。スペクトルが収集されると、[シグナルグラフ]に表示されます。干渉の列の数は[干渉の数]フィールドに入力した内容によって異なります。

[テスト]

このセルを選択し、サンプルを提示してから、[リード]をクリックして、FACT が検体のピークを干渉のピークから分離しているかどうかを確認します。ディスプレイにテストサンプルのスペクトルに適用された FACT モデルが表示されるため、収集したスペクトルのどの部分がサンプルに起因するもので、どの部分が干渉に起因するものかを確認できます。

[リード]

クリックして選択した元素を読み取ります。

右クリックメニュー

メニューにアクセスするには、テーブルのセルを選択し、右クリックします。

  • [モデルタイプを <マニュアル> に設定] - マニュアルモードが再選択されます。
  • [モデルタイプを「なし」に設定] - 選択した波長にモデルが適用されません。[マトリックス]行と[干渉]行にのみ適用できます。
  • [ワークシートモデルを <マニュアル> として保存] - ワークシートの溶液が選択されており、有効な測定が存在する場合、マニュアルモデルに変換されます。
  • [ライブラリにモデルを保存] - 選択してモデルを FACT ライブラリに保存します。

[ライブラリモデル]

この機能は 21 CFR 11 を有効にしたソフトウェアでは使用できません。現在のワークシートの FACT モデルを[FACT ライブラリ]にコピーするか、[FACT ライブラリ]からモデルを現在のワークシートにコピーします。[FACT ライブラリ]は、ライブラリが作成された PC 上のすべてのワークシートで共有されます。

選択した元素と波長がコピーした FACT モデルと、実現性のあるモデルとして互換性があることを確認する必要があります。コピーする元素と波長がターゲットのワークシートに存在しており、[条件]ページでバックグラウンド補正タイプとして FACT が選択されている必要があります。

1 つのワークシートに同じ元素波長の複数のコピーがあるときは、[FACT ライブラリ]は常に最初のものにコピーします。

[アキシャル]、[ラディアル]、[SVDV]

ライブラリを使用して、同一の波長に最大 3 つの異なるモデルを保存できます。FACT モデルを保存するモードを選択します。

ワークシートからライブラリに FACT モデルをコピー

  1. モデルをダブルクリックします。
  2. セルを右クリックします。
  3. [ライブラリにモデルを保存]を選択します。

ライブラリからワークシート FACT モデルをコピー

  1. モデルを 1 つ以上選択します。
  2. 右クリックして[ワークシートにモデルを保存]を選択します。

ライブラリから FACT モデルを削除

  1. モデルを 1 つ以上選択します。
  2. 右クリックして[削除]を選択します。

[シグナルグラフ]

上記ので表示対象に選択した FACT の結果が表示されます。拡大鏡アイコンを使用して、拡大、縮小、ズームレベルのリセットを実行します。グラフを右クリックして .CSV 形式でデータをエクスポートします。 

追加情報

マニュアルまたは自動の FACT モデリング

適切な列をクリックしてから[リード]をクリックすることにより、このタブの検体と干渉についてマニュアルの FACT モデリングを実行できます。または、モデリング時に使用する検体として標準液の 1 つと、干渉 1、2、3 などに任意のサンプルを選択できます。

関連項目: