不良精度

不良精度は、相対標準偏差が低いか高いことや、シグナルのノイズが大きいことでも示されます。

装置が不良精度を示すときに考えられる原因は複数あります。考えられる原因を以下に示します。ただし、これらに限られるわけではありません。

問題の識別

低いまたは高い相対標準偏差は、一般に、サンプル導入システムが正常に機能していないときに生じます。

低い精度は、感度が低いときにも症状として現れます。精度の問題の解決を試みる前に、光学性能テストを実行して強度が正しいことを確認してから、観察された分解能、感度、および精度の値をテストで挙げられた値と比較します。

結果が同等のときは、問題はメソッド(アプリケーション)関連であって、装置の故障ではない可能性があります。

通常の値と 20% 未満異なる結果がある場合は、状態がよいことがわかっている SeaSpray ネブライザーおよびサイクロン スプレーチャンバでテストを再実行して、これらのコンポーネントが原因である可能性を排除します。

相当する精度が不十分な場合、問題があることが確認できます。結果が悪い波長と程度を確認します。据付時の値または過去の据付時適格性評価の値と比較します。次表は、故障内容と、考えられる解決方法についての指示をまとめたものです。

精度は、複数の繰り返しに渡るシグナルの再現性で評価され(通常は、光学性能テストの 10 回の繰り返し)、%RSD として表されます。1 つの外れ値(高いまたは低い測定値)により、このテストが不合格になる可能性があります。

低いまたは高い相対標準偏差が観察されたときは、ドリフト(例えば、一定した増加、繰り返しシグナルの減少など)、ノイズ、または外れ値が原因で発生したのかを見極める必要があります。

  • ドリフトまたはノイズ — シグナルのドリフトやノイズの可能性をチェックするには、波長較正液か 5 ppm の Mn 溶液を吸引しながらタイムスキャン機能で分析シグナルを監視します。この手順を実行する方法については、ここを参照してください
  • 外れ値 — 繰り返しを監視し、外れ値がないかチェックします(特に最初の測定値)。この測定値が低いときは、取り込み遅延時間がチューブの長さに対して短すぎるため、長くする必要があります。

故障内容(精度)

考えられる原因

考えられる原因(次のレベル)

すべての波長やほとんどの波長で精度が低い

サンプル導入コンポーネントの汚染

 

サンプルの送出が非均一

 

パラメータの最適化

 

波長のオフピーク

  • 装置のウォームアップ - 装置を 20 分間ウォームアップさせてください。

  • 装置較正

 

一部可溶性の分析(塩)

ネブライザーインジェクタチューブが部分的に詰まっている

 

塩濃度が高い

ネブライザーインジェクタチューブが部分的に詰まっている

 

その前に有機物を分析した

スプレーチャンバネブライザートーチインジェクターの汚染

 

プラズマが不安定

  • アルゴンの汚染

  • 空気の漏れ - すべての接続部およびフィッティングをチェックします。

一部の波長の精度が低い

波長のオフピーク

  • 装置のウォームアップ - 装置を 20 分間ウォームアップさせてください。

  • 装置較正

 

V 溝ネブライザー

サンプル導入システムを通るように蒸留水を吸引し、ネブライザーをスプレーチャンバから注意深く取り外すことにより、ネブライザーに詰まりがないかチェックします。ネブライザーを通常の作動位置に保持して、スプレーを観察します。スプレーは均等に出ており、飛び散ってはなりません。ペリスタルティックポンプを調整してもスプレーが均等にならない場合は、ネブライザーをクリーニングします

ある程度のパルスは見えますが、これは許容できます。

ガラス製同軸ネブライザー

  • ネブライザーの先端を虫眼鏡で点検します。先端が損傷している場合は、ネブライザーを交換します。
  • ネブライザーに詰まりがないかチェックします
  • サンプル導入システムを通るように蒸留水を吸引し、ネブライザーをスプレーチャンバから注意深く取り外し、ネブライザーの先端から出るスプレーを観察します。サンプルは、ポンプ速度が適切であれば、ネブライザーの先端から飛び散らずに均等にスプレーされるはずです。スプレーが不規則になるときは、ネブライザーの穴が詰まっている可能性があります。その場合、ネブライザーをクリーニングする必要があります。

ある程度のパルスは見えますが、これは許容できます。

ネブライザー内のキャピラリーをチェックします。内部の詰まりが原因で、溶液の噴霧に、過度に高いネブライザー流量が必要になっている可能性があります。

Tip
サンプル インレット キャピラリーでの漏れは、多くの場合、ネブライザーキャピラリーが詰まっている兆候です。

トーチ

トーチに装置の光学系と干渉するような沈着物がないかチェックします。インジェクタチューブは必ず洗浄してください。必要に応じてトーチを洗浄します

トーチのインジェクタチューブが壊れているか摩耗しているときは、トーチを交換します。

スプレーチャンバ内の汚染

スプレーチャンバーをサンプル導入システムから取り外し、交換前にスプレーチャンバーを洗浄します

ポンプ/ポンプチューブ

ポンプとポンプチューブの動作をチェックするには、サンプルチューブを溶液に出し入れし、キャピラリーに沿ったサンプルの取り込みを観察します。液体の流路がスムーズでないときや、液体が一切取り込まれないときは、以下の要因が絡んでいる可能性があります。

  • ポンプチューブが潰されているか折れ曲がっていて、スムーズな流量が得られていません。ローラー全体に渡ってポンプチューブを再調整し、よじれている箇所はすべて直してください。
  • ポンプ速度が低すぎて、強いパルスが発生したり、流れているサンプルが飛び散ったりしています。サンプルがスムーズに取り込まれるようになるまで、流量を調整してください。
  • 平たくなっているポンプチューブや弾力性が失われたポンプチューブは、新しいチューブに交換してください。

Tip
取り込み流量を制限するためにポンプ速度を低くする必要があるときは(たとえば、何らかの有機サンプルで)、ID が小さいポンプチューブを選べば、低い取込み流量を保ちながら強いパルスを避けることができます。 

軽度のパルスは見えますが、これは許容できます。

空気の漏れ

サンプル導入システムのチューブすべて、および接続部で空気の漏れがないかチェックします。

装置較正

装置がピークのエッジで読み取りを行っていると(装置較正エラーが原因で)、シグナルにノイズが多くなることがあります。これが発生する場合は、装置較正を実行してください

非水性分析後の水性分析

非水性の有機サンプルを分析した後に水性分析を実行するとき(またはその逆)は、互いに混和する溶媒を使用して完全に洗い流す必要があります。

スプレーチャンバやトーチに微量の有機サンプルが残っている可能性があります。有機サンプルから水性サンプルに切り替える際には、よく濯ぎ、必要に応じてスプレーチャンバおよびトーチを洗浄してください。

一部可溶性の塩

溶けにくい塩は、噴霧したときに部分的に沈殿して、シグナルにノイズを発生させる可能性があります。塩をより溶けやすい形態に変えると、ノイズを減らすのに役立つことがあります。たとえば、フッ素溶液にホウ酸を添加すると、ホウフッ化物を溶けやすくすることができます。

高塩分

高塩分のサンプルは、薄い溶液よりも多くのノイズを発生させます。精度を上げる必要がある場合は、サンプルを希釈してください。