低感度の原因

装置が低感度(低分析シグナル強度)を呈するときに考えられる原因はいくつかあります。考えられる原因を以下に示します。ただし、これらに限られるわけではありません。

問題の原因の特定

最初のステップでは、ICP Expert ソフトウェアで[テスト]タブから「光学性能」テストを実行して、装置の有効性を検証します。「光学性能」テストでは、分解能テスト、感度テスト、および精度テストが実行されます。結果を通常の値と比較します。

  • 結果が同等のときは、問題はメソッド(アプリケーション)関連であって、装置の故障ではない可能性があります。
  • 結果が通常の値を 20% 未満下回る場合は、状態がよいことがわかっている SeaSpray ネブライザーとサイクロン スプレーチャンバでテストを再実行して、これらのコンポーネントが原因である可能性を排除します。

感度の結果が不十分な場合、問題があることが確認できます。生成されたテストレポートを使用して、感度が低い波長とその程度を確認します。据付の結果または過去の据付時適格性評価の値と比較してください。次表は、故障内容と、考えられる解決方法についての指示をまとめたものです。

「光学性能」テストを実行する方法の操作手順はここにあります。

故障内容(程度)

考えられる原因

考えられる原因(次のレベル)

すべての波長で感度が非常に低い

サンプル導入部に大きな詰まり

ネブライザーの詰まり

チューブ(アクセサリーを含む)のよじれ、詰まり、汚れ

トーチインジェクタの詰まり

フィッティングでの漏れ

 

ネブライザー

ポンプチューブ

オートサンプラ

チューブ内の気泡

サンプル送出

 

ポンプチューブの張力

ポンプチューブの伸び

標準液の濃度

新しい標準液の準備

パラメータの最適化

[条件]ページでネブライザー流量を調整します。

[条件]ページでラディアルまたは SVDV 装置の観測位置(高さ)を調整します。

[条件]ページでプラズマ流量または RF パワーを調整します。

ポンプ速度

波長のオフピーク

 

装置のウォームアップ - アイドル状態から装置を 20 分間ウォームアップさせます。

装置較正

暗電流値が高い

検出器較正

ブランクが汚染されている

サンプル準備 - 新しいブランク溶液を準備します。

ハウスキーピング

サンプルマトリックス

EIE からの干渉

ランダムな波長で感度が低い

波長のオフピーク

装置のウォームアップ - アイドル状態から装置を 20 分間ウォームアップさせます。

装置較正

検出器のレンズに水滴がついているためピークが現れないか低い

パージライン内に水滴があります。「パージガスの汚染」を参照してください。

暗電流値が高い

検出器較正

短い波長で感度が低い

サンプル導入の小さい制限

ネブライザーの詰まり

チューブのよじれ、詰まり

光学系に空気が入っている(パージの欠如)

光学系のパージ - 装置に電源が入ったときに自動的にオンになります。ガス供給圧力部とラインに漏れや損傷したチューブがないかチェックします。

起動パージ - 高いガス流量を光学系へ送ります。

スナウトパージ

コーンパージ - プラズマが点火されたときに自動的にオンになります。

ウィンドウの汚染

アキシャル/ラディアルウィンドウ

パラメータの最適化

[条件]ページでネブライザー流量を調整します。

[条件]ページでラディアルまたは SVDV 装置の観測位置(高さ)を調整します。

[条件]ページでプラズマ流量または RF パワーを調整します。

すべての波長でわずかな感度

波長のオフピーク

装置のウォームアップ - アイドル状態から装置を 20 分間ウォームアップさせます。

装置較正

暗電流値が高い

検出器較正

パージガスの汚染(湿気)

光学系パージガスが湿気で汚染されると、感度が失われる原因となり、ピークがランダムに失われるケースが多数発生しています。パージガスからの湿気は、CCD ウィンドウに集まり、特定の波長のピークの損失につながります。

パージガスが問題かどうかを確認するには、チラーを停止して、約 30 分待ってから、チラーの電源を入れ直して、装置較正を実行します。カメラの温度が上昇して湿気が蒸発しており、再び較正に合格するはずです。

これで問題が解決するときは、ガスラインをパージしたり、パージラインに湿気フィルターを追加したりします。

ネブライザーのブロック

ネブライザーが詰まっていないかチェックし必要に応じて洗浄します

インジェクタチューブの詰まり

インジェクタチューブに塩やカーボンが沈着していないかチェックします(有機系の作業で)。必要に応じてトーチを洗浄します

ポンプチューブ

弾力性が失われたポンプチューブは、サンプルをネブライザーに適切に送れなくなります。ポンプチューブに弾力がなかったり、潰れていたり、伸ばさずにポンプローラーにフィットできたりするときは、新しいポンプチューブと交換する必要があります。

有機サンプル

ネブライザー流量を下げたり、ポンプ流量を下げたり、より小さな ID ポンプチューブを使用したりします。

標準液の準備が正しくない

新鮮な標準液のセットを正しい濃度で準備します。

条件が最適化されていない

最適化のためのメソッドを作成して実行し、以下の点をチェックします。 

  • ピークが検索ウィンドウ内に現れる
  • ピークが滑らかになっている(ギザギザしていない)。

最適なシグナルが得られるまで、ネブライザー流量トーチの観測位置(高さ)(ラディアルのみ)などの動作条件を最適化します。

最適化を目的とするメソッドの作成と実行

  1. ICP-OES 外部排気をオンにしてから、ICP-OES をオンにします。
  2. ICP Expert ソフトウェアを開きます。
  3. [プラズマ オン]をクリックするか、キーボードの F5 を押して、プラズマを点火します。
  4. アイドル状態からオンにしたときは、ICP-OES を 20 分間ウォームアップさせます。
  5. [新規作成]をクリックします。
  6. [元素]タブをクリックします。
  7. 適切な元素と波長を選択してから、[追加]をクリックします。
  8. [条件]タブをクリックします。
  9. 最適化するビューに応じて、[アキシャル][ラディアル]を選択します。
  10. [グラフ表示]セクションの[タイムスキャン]を選択します。
  11. 溶液チューブをペリスタルティックポンプから波長較正溶液(またはその他の標準液)に挿入し、さらにドレインチューブをドレインタンクに入れます。
  12. ポンプをオンにし、溶液の吸入を開始します。
  13. [タイムスキャン]をクリックして、トレースを開始します。
  14. ネブライザー流量やトーチの観測位置 (高さ)(ラディアルシステムのみ)などの動作条件を 1 度に 1 つずつ調整して、最大強度に対して最適化します。

スキャンが表示されない

問題の識別

スキャンが表示されないときは、さまざまなことが原因になる可能性があります。以下の手順が、問題の特定に役立つ可能性があります。

スペクトルの読み取りを実行し(257.610 nm ラインを使用して 1 ppm Mn 溶液を使用)、ピークがスキャンウィンドウ内に表示されることをチェックします。

ピークが表示されないときは、他の元素でスペクトルの読み取りの実行を試みます。

  1. イットリウム溶液を吸引して、プラズマの特徴的な赤/青/赤エミッションがないかチェックします。
  2. 注目している元素に対して、スキャン(スペクトルの読み取り)を繰り返します。依然としてスキャンウィンドウ内にピークが表示されないときは、ナトリウムサンプルを吸引し、プラズマを表示します。ナトリウムの黄色がプラズマ内に現れたら、ナトリウムの 589.592 nm ラインでスキャンを実行します。依然としてピークが観察されない場合は、最寄りのアジレントのフィールドサービスエンジニアにご連絡ください

サンプル濃度

サンプルまたは標準液の濃度が非常に低いと、分析シグナルが生成されないことがあります。検体の濃度を 10 倍または 100 倍に増加させてください。

条件が最適化されていない

スペクトルの読み取りを実行し(1 ppm Mn 溶液を使用)、以下の点をチェックします。 

  • ピークが検索ウィンドウ内に現れる
  • ピークが滑らかになっている(ギザギザしていない)。

最適なシグナルが得られるまで、動作条件を最適化します。

ネブライザーのブロック

ネブライザーが詰まっていないかチェックし、必要に応じて洗浄します