アドバンスド希釈システム 2(ADS 2)のトラブルシューティングおよびメソッドの最適化

このページでは、以下の情報を提供します。

ADS 2 テストについて(ADS 2)

このテストは、5 ppm Mn 標準液(ICP-OES 波長較正液に含まれる)の 2 倍、10 倍、100 倍の 3 段階の固定希釈を行った後、濃度が許容誤差 +/-10% 以内であることを確認します。テストは、[装置]ウィンドウの[テスト]タブから実行します。  

このテストにはオートサンプラが必要です。[オートサンプラ]ページと[シーケンス]ページにある、指定の場所に溶液を置きます。

アドバンスド希釈システム 2(ADS 2)テストを開始する前に

アドバンスド希釈システム 2(ADS 2)テストの実行

  1. ICP Expert ツールバーの[装置]をクリックします。
  2. [テスト]タブをクリックします。
  3. [アドバンスド希釈システム 2(ADS 2)テスト]を除き、すべてのテストを選択解除します。
  4. ブランクと標準液を、標準ラックのそれぞれ位置 1 と 2 にセットします。
  5. [テスト実行] をクリックします。
  6. テストが開始されると、メソッドパラメータが自動的に入力されます。

レポートを印刷するには、印刷プレビュー表示の左上隅にある印刷ボタンをクリックします。

AVS/ADS タイミングモニタを使用したトラブルシューティングまたはメソッドパラメータの絞り込み

AVS/ADS タイミングモニタの実行方法の説明は、こちらを参照してください。 

[条件]ページの[AVS アクセサリ]で定義されているパラメータから開始します。その後、必要に応じて、トラブルシューティングの際やメソッドパラメータを絞り込む場合に、時間や流量を調整します。

以下は、いくつかの AVS/ADS タイミングモニタのスキャンと、示された問題を解決する方法のリストです。ピーク形状をこれらと比較して、メソッドパラメータを絞り込むか、問題を解決してください。「良好な」AVS/ADS タイミングモニタのスキャンの例については、こちらを参照してください。

遅延したピークまたは溶液導入

原因 操作
ポンプ取り込み流量が低すぎます。サンプルループを充填するのに十分な速さで溶液が送液されていません。 [ポンプ取り込み流量]を上げます。
バルブ取り込み遅延が低すぎます。溶液がオートサンプラからスイッチングバルブを通過するのに必要な時間が短すぎるため、サンプルループを満たす前に十分な溶液がバルブに到達できません。 [バルブ取り込み遅延]を増加します。ADS 2 を有効にした場合には、余分なチューブを補うために、自動的に追加の時間が追加されます。
AVS サンプルループと ADS 2 希釈ループのサイズが同じでないか、ループサイズのパラメータが間違って設定されています。 両方のループが同じサイズでなければなりません。
ADS 2 または ICP-OES のループを変更します。
ソフトウェアで、ループサイズを設定します。 
チューブに空気が入っています。 ラインをプライミングして、システムをフラッシュします。AVS ポンプを動作させて、溶液をチューブに導入します。

タイミングモニタの例

  1. 条件セット 1 の開始時での遅延したピーク。開始ピークは、条件セット 2 のように、よりシャープなものでなければなりません。
  2. ループが半分しか満たされていません。これにより、測定ステップ中に、サンプル以外の溶液がプラズマに送られる結果となります。

この例に使用されている条件セットは、こちらを参照してください

測定ウィンドウの開始部が平らになっていない

原因 操作
安定化時間が短すぎます。サンプル導入後、プラズマは平衡化に、より長い時間を要します。 [条件]ページで、[安定化時間]を増加します。
溶液中の元素に「粘着性」があります。これは、サンプルマトリックスとリンスの設定によるものである可能性があります。  [安定化時間]を増加するか、別のサンプル準備手順を使用します。 
溶液中の他の元素を調べます。残りと比べて 1 つの元素のみにキャリーオーバーがあるようであれば、リンス溶液を交換するか、リンス時間を増加します

タイミングモニタの例

  1. 測定の開始時にピークが発生しています。これは、安定化時間が十分でないことを示している可能性があります。

  1. サンプル導入が遅いため、測定開始時のピークが曲がっています。 

この例に使用されている条件セットは、こちらを参照してください

測定が終了する前にピークが停止する

原因 操作
メソッド条件で設定された分析時間に対して、サンプルが不十分です。 安定化時間を最適化します
[条件]ページで[リード時間]を調整します。
[条件]ページの[条件セット]で流量を調整します。
ソフトウェアで、ループサイズを大きくします
ペリスタルティックポンプの速度および/または圧力バーを調整します

タイミングモニタの例

  1. 測定が終了する前にピークが終了しています。これは、安定化時間が長すぎるか、流量が高すぎることを示している可能性があります。

この例に使用されている条件セットは、こちらを参照してください

測定ピークの開始時のシグナルにスパイクがある

原因 操作
バルブポートのシリンジフィッティングが緩んでいるか、シリンジが正しく取り付けられていません。 希釈液とキャリア溶液の接続を確認します
シリンジが正しく取り付けられていることを確認します
希釈液の量が少ないか空です。 希釈液コンテナを確認し、必要に応じて充填します。
シンカーを使用している場合は、液体の流れがスムーズで一貫性があることをチェックします。

タイミングモニタの例

  1. ピークがスパイク状になった後、安定しています。ここに示されるどちらのピークも、ピーク高さが、測定終了時近くよりも測定開始時に高くなっています。 

  1. 最初の条件セットの測定においてピークがありません。これは、サンプルを AVS に押し出すための希釈液またはキャリア溶液がなかったためです。2 つ目の条件セットの測定で見られる大きなスパイクは、サンプル送出の途中で、希釈液またはキャリア溶液がなくなったために生じています。

この例に使用されている条件セットは、こちらを参照してください

非常に遅延した安定ピーク

原因 操作
希釈液の量が少ないか空です。 希釈液コンテナを確認し、必要に応じて充填します。

タイミングモニタの例

  1. 安定化の開始からピークの出現までに遅延があります。最初の条件セットではサンプルがまったく送出されておらず、2 つ目の条件セットでは遅延があります。

この例に使用されている条件セットは、こちらを参照してください

非常に遅延した不安定ピーク

原因 操作
キャリア溶液の量が少ないか空です。 キャリア液コンテナを確認し、必要に応じて充填します。
ポートのキャリアシリンジが緩んでいます。 希釈液とキャリア溶液の接続を確認します
シリンジが正しく取り付けられていることを確認します

タイミングモニタの例

  1. ピークの出現までに長い遅延があります。最初の条件セットではサンプルがまったく送出されておらず、2 つ目の条件セットでは遅延があり、不安定です。

この例に使用されている条件セットは、こちらを参照してください

緩慢なピーク低下

原因 操作
溶液中の対象元素に「粘着性」があります。これは、サンプルマトリックスまたはリンスの設定によるものである可能性があります。  リンス時間を増加して、後続のサンプルへの影響を最小限に抑えます。
リンス溶液を交換します。 
リンスが完了した後に条件が変更されています 溶液中の他の元素を調べます。残りと比べて 1 つの元素のみにキャリーオーバーがあるようであれば、リンス溶液を交換するか、リンス時間を増加します

タイミングモニタの例

  1. 割り当てられたリンス時間中に、シグナルが消失していません。  

この例に使用されている条件セットは、こちらを参照してください

リード時間にわたって強度が徐々に増加する

原因 操作
キャリア溶液の量が少ないか空です。 キャリア液コンテナを確認し、必要に応じて充填します。
装置がまだウォームアップ中であるか、パージがまだ完了していません。  装置のウォームアップには 20 分かかる場合があります。
189 nm 未満の波長を使用している場合は、パージに数時間かかる場合があります。
長期のシャットダウン後に起動する場合は、ポリクロメーターの温度の安定化にも数時間かかる場合があります。

タイミングモニタの例

  1. 両方の条件セットで、経時的に強度が増加しています。 

この例に使用されている条件セットは、こちらを参照してください

測定中にシグナルが現れない

原因 操作
サンプル導入システムの配管が正しくない 使用しているチューブが正しく、ADS または ICP-OES の正しい場所に接続されていることを確認します。
ADS 2 チューブの接続方法 
AVS チューブの接続方法
サンプル導入システムのチューブとコンポーネントの接続方法
サンプル導入チューブの接続の緩み ADS 2、AVS、ICP-OES のすべての接続が締まっていることをチェックします。
重要:フィッティングは手締めのみとしてください。チューブの締め付けに、工具を使用しないでください。
ADS 2 設定で、正しくないループサイズが設定されている。 ICP Expert で、[装置] > [設定]をクリックします。ドロップダウンメニューから正しい[ループ容量]を選択します。
重要:AVS と ADS 2 の両方のループは同じサイズでなければなりません。
AVS/ADS のループが満たされていません。 [条件]ページで、[ポンプ取り込み流量][バルブ取り込み遅延]の流量が、ループを満たすのに十分に高く設定されていることをチェックします。

タイミングモニタの例

  1. 測定中にシグナルがありません。  

この例に使用されている条件セットは、こちらを参照してください

タイムスキャン中にピークが変動する

原因 操作
溶液中に気泡があります。 空気の漏れがないか確認します。 
[条件]ページで、[ポンプ取り込み流量][ポンプ注入流量]が高すぎないことをチェックします。

タイミングモニタの例

  1. 強度に一貫性がありません。  

この例に使用されている条件セットは、こちらを参照してください

シグナルが低く不安定

原因 操作
どちらのシリンジにも溶液がありません。
キャリアコンテナまたは希釈液コンテナに溶液がありません。
シリンジポートのフィッティングが締まっていません。
サンプルが送出されていません。
希釈液コンテナとキャリアコンテナを充填し、シリンジをプライミングします。 

測定中にシグナルが現れないも参照してください。

タイミングモニタの例

  1. 強度に一貫性がなく、非常に低くなっています。  

この例に使用されている条件セットは、こちらを参照してください

基本となる条件セット

共通条件

共通条件 AVS アクセサリのパラメータ
繰り返し 3 ポンプ取り込み流量(mL/min) 40
ポンプ速度(rpm) 12 ポンプ注入流量(mL/min) 9
リンス時間(s) 0 バルブ取り込み遅延 10
高速ポンプ - バブルインジェクタ注入時間(s) 2
可変希釈リンス時間(s) 0 プレリンス時間 2

測定条件

測定コンディション  
条件セット 1
リード時間(s) 5 ネブライザー流量(L/min) 0.8
RF パワー(kW) 1.25 プラズマガス流量(L/min) 12
安定化時間(s) 5 補助ガス流量(L/min) 1
観測モード ラディアル メークアップ流量(L/min) 0
観測位置 8    
条件セット 2
リード時間(s) 5 ネブライザー流量(L/min) 0.6
RF パワー(kW) 1.35 プラズマガス流量(L/min) 12
安定化時間(s) 3 補助ガス流量(L/min) 1
観測モード SVDV メークアップ流量(L/min) 0
観測位置 9    

ピーク低下の場合の条件セット

共通条件

共通条件 AVS アクセサリのパラメータ
繰り返し 3 ポンプ取り込み流量(mL/min) 40
ポンプ速度(rpm) 12 ポンプ注入流量(mL/min) 9
リンス時間(s) 0 バルブ取り込み遅延 10
高速ポンプ - バブルインジェクタ注入時間(s) 2
可変希釈リンス時間(s) 0 プレリンス時間 2

測定条件

測定コンディション  
条件セット 1
リード時間(s) 10 ネブライザー流量(L/min) 0.8
RF パワー(kW) 1.25 プラズマガス流量(L/min) 12
安定化時間(s) 7 補助ガス流量(L/min) 1
観測モード ラディアル メークアップ流量(L/min) 0
観測位置 8    
条件セット 2
リード時間(s) 10 ネブライザー流量(L/min) 0.6
RF パワー(kW) 1.35 プラズマガス流量(L/min) 12
安定化時間(s) 9 補助ガス流量(L/min) 1
観測モード SVDV メークアップ流量(L/min) 0
観測位置 9    

遅延したピークの場合の条件セット

共通条件

共通条件 AVS アクセサリのパラメータ
繰り返し 3 ポンプ取り込み流量(mL/min) 40
ポンプ速度(rpm) 12 ポンプ注入流量(mL/min) 9
リンス時間(s) 0 バルブ取り込み遅延 8.5
高速ポンプ - バブルインジェクタ注入時間(s) 2
可変希釈リンス時間(s) 0 プレリンス時間 2

測定条件

測定コンディション  
条件セット 1
リード時間(s) 5 ネブライザー流量(L/min) 0.8
RF パワー(kW) 1.25 プラズマガス流量(L/min) 12
安定化時間(s) 5 補助ガス流量(L/min) 1
観測モード ラディアル メークアップ流量(L/min) 0
観測位置 8    
条件セット 2
リード時間(s) 5 ネブライザー流量(L/min) 0.6
RF パワー(kW) 1.35 プラズマガス流量(L/min) 12
安定化時間(s) 4 補助ガス流量(L/min) 1
観測モード SVDV メークアップ流量(L/min) 0
観測位置 9    

測定開始時のピークが曲がった場合の条件セット

共通条件

共通条件 AVS アクセサリのパラメータ
繰り返し 3 ポンプ取り込み流量(mL/min) 40
ポンプ速度(rpm) 12 ポンプ注入流量(mL/min) 9
リンス時間(s) 0 バルブ取り込み遅延 10
高速ポンプ - バブルインジェクタ注入時間(s) 2
可変希釈リンス時間(s) 0 プレリンス時間 2

測定条件

測定コンディション  
条件セット 1
リード時間(s) 5 ネブライザー流量(L/min) 0.8
RF パワー(kW) 1.25 プラズマガス流量(L/min) 12
安定化時間(s) 5 補助ガス流量(L/min) 1
観測モード ラディアル メークアップ流量(L/min) 0
観測位置 8    
条件セット 2
リード時間(s) 5 ネブライザー流量(L/min) 0.6
RF パワー(kW) 1.35 プラズマガス流量(L/min) 12
安定化時間(s) 3 補助ガス流量(L/min) 1
観測モード SVDV メークアップ流量(L/min) 0
観測位置 9    

 

 

関連項目: